検索
Global Nav メニューを開く
Global Nav メニューを閉じる
  1. TOP
  2. モリトラ!
  3. 新本社オフィスのコンセプトを形に。ドキドキ、ハラハラ、ワクワクの経験を経て、社風を知り、皆の優しさを知る。

新本社オフィスのコンセプトを形に。
ドキドキ、ハラハラ、ワクワクの経験を経て、
社風を知り、皆の優しさを知る。

本社移転チームの中で、新オフィスのコンセプトを具体的な空間に落とし込む役割を担ったのが、ファシリティマネジメント部の永山由里香。社歴は浅いが、抜群のコミュニケーション力と突破力で外部の専門家と社内をつなぎ、各部署をつなぐ大役を果たした。


一永山は異色の経歴の持ち主。大学で建築を学び、姫路の店舗設計事務所に入社したが、5年後、「海外生活を経験したい」とアイルランドへ。シェアハウスに住み、語学を学びながらフリーで店舗設計をしたり、レストランで働いたりしながら、週末はあちこち旅をした。

20代の頃は建築とデザインにしか興味がなくて、デザインとして綺麗に成り立たせることにこだわっていました。でも、あるとき、「それがお店の繁盛につながるのか」、「設計者として目指すべき姿なのか」と自問自答し、違うことに気づいたんです。

きっかけはアイルランド留学です。いろいろな国の人と一緒にシェアハウスで暮らしてみて、「自分の当たり前は、世界では当たり前じゃないんだ」と気づき、「自分のルールやこだわりより、他者の価値観を受け入れて違いを楽しもう」と思うようになりました。

帰国後、東京の設計事務所で事業用不動産のリノベーションなどを担当しましたが、クライアントの想いや要望を設計に落とし込めるようになったのはそのおかげだと思います。ただ、設計事務所の仕事は完成したら終わり。使っている方の生の声を聞く機会はなかなかありません。使い手の声が聞きたくて、2020年11月、不動産を所有し運営している森トラストに入社しました。

一ファシリティマネジメント(FM)部に配属されて3か月後、2021年2月、思いがけないチャンスが巡ってきた。本社移転のワーキンググループの社内公募である。

「やりたい!」と思い、手を挙げました。最初はコンセプトメイキングでしたが、2021年5月ごろから、外部の設計者事務所やデザイナーに入ってもらい、新オフィスのコンセプトやキーワードを具体的な形にしていく作業がスタート。所属がFM部門でしたので、「永山さん、担当して」と言われ、調整役を引き受けました。

一担当者のつもりで入った内装デザインの現場で、まさかの大役を任された。外部との調整だけでなく、社長や関連部署間、部署内など、調整・確認作業の大変さを思い知ることになる。

迂闊にも、本社移転がこれほど大変なものとは思っていませんでした。前職までが中小規模の会社だったので、各部署との調整や確認、部署内の確認作業などがこんなにたくさんあるなんて想像していなかったのです。

しかも、私はコロナ禍での中途入社。他部署の皆さんの顔もよくわからず、誰に相談していいかもわからない。FM部は外部とのやりとりがほとんどですが、本社移転プロジェクトでは社長とのやりとりも多くなります。途方にくれていた私を見かねたのでしょう、いろいろな方が手を差し伸べてくださいました。「優しくて親切な人が多い会社だなあ」と感激し、「こうなったら開き直って助けてもらおう」と思い、頼りまくりました(笑)。

普段、FM部は社長とのやりとりが多数発生する部署ではないので、他部署の先輩も相談に乗ってくださり、助けていただきました。社長の考えやこだわりをよくご存知で、社内ネットワークも広いので、課題ごとに相談先を振り分けてもらいました。

他にもたくさんの方に助けてもらいました。内装工事の終盤のことです。新本社をメディアにお披露目する内覧会が目前に迫るなか、ロビーの飾り棚などに何を飾るか、誰が担当するのか、ぽっかり抜けていたんです。もう、パニック寸前(笑)。そのとき、ある役員が「ホテルの備品や住宅のショールームの小物を借りてきたら」と調達先と相談先をまとめ、声までかけておいてくれたんです。さらに関係者の連絡チャットグループをつくって指揮してくれた方、アイディアから調達方法まで示してくれた方、無理なお願いに嫌な顔もせず、スピーディーに対応してくれた方々のおかげで、数日足らずで必要な品物を揃え、コーディネートすることができました。皆さんの優しさと行動力に感激した出来事です。

一誰もが集まりたくなるオフィス「DESTINETION OFFICE」を目指して、内装デザインにもホテル事業のノウハウを随所に取り入れて森トラストらしさを出した。自由な働き方や使い方を促す空間づくりや、時代の変化やワーカーのニーズに素早く対応できる「Agile(アジャイル)」も重要なポイントだった。

新本社オフィスの内装デザインは、設計事務所案をもとに、「森トラストらしさ」や「自由な働き方や使い方(フリーアドレス&ABW)」、そして「状況の変化に素早く対応できること(Agile)」を実現できるよう、アレンジを加えました。

特にロビーは、ホテル事業を展開している当社らしい空間ではないかと思います。社長自身が内装デザインに深い知見とこだわりがあり、何度もやりとりをしながらマテリアルからディテールまでこだわり抜いた結果だと思います。

エントランス空間「Lobby」

ロビー内の打ち合わせスペース

もうひとつの大きな特徴は、ロビーを来客に対応する空間だけでなく、社員が働く空間としても使っていること。これは空間デザインを考える上で大きなチャレンジでした。性格の異なる2つの機能を空間的に両立させるため、スケルトン天井にした部分の床レベルを下げてマテリアルなどを変えたり、植栽や家具の配置を工夫したりして緩やかに空間を分けました。植栽や什器のレイアウトを変えれば、パーティーやイベントにも対応できる可変性の高い空間になっています。

社内外の交流スペース兼執務室空間がイベント時には最大200名収容可能なイベント会場に

部内外を超えた社内懇親会の場所としてロビーが活用されている

出来上がるまでは、セキュリティや使い方について疑問視する意見が多かったのですが、最近では「私、毎日のようにロビーで働いています!」とか、「業務に集中したいときは、ロビーの窓際ってちょうどいい。ここ使えるよ」という声も。実は、この席は私の1番のお気に入り。窓の先に見える緑と背中の緑に囲われて、心も落ち着き、集中できそうな隠れ家みたいだなと、計画時から気に入ってました。私自身もオープン前の超多忙な時間をここで過ごしたので、朝一番にこの席が埋まっていると聞き、「やった!」と心の中でガッツポーズ(笑)。

後ろに壁とグリーンがあり、目隠しになる永山お気に入りの席(中央)

メディアや来客の方々の評判もよく、いろいろな感想やアイディアをいただいています。この空間にはクリエイティビティを触発する何かがあるような気がします。

一執務空間の天井に斜めに走るライン照明は、視覚的に空間を分断せず、自由な働き方、使い方を促す効果も…。

FM部なので、いろいろな企業のオフィスを拝見する機会も多く、いいなと思ったものは新オフィスにも採用しています。執務空間の天井に斜めに配したライン照明もその一つ。その時々の仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択する働き方「ABW」を空間的にも表現しようと、あえて規則性を崩しました。L字型の執務室の真ん中に社内ラウンジがあるので、それぞれのゾーンをできる限り分断しないようにするという意図もあります。

一社員の反応は? 移転後もドキドキ、ハラハラの日々が続いた。新オフィスに対する社員の評価は時間の経過とともに高まっている。

移転直後は不満の声が多くてちょっと傷ついたり、落ち込んだり…(笑)。移転が一段落するまで、例のロビーの隠れ家にこもって作業していました。その後、執務エリアで仕事をするようになったのですが、自分で実際に使いつつ、いろいろな意見を聞くことで新しい発見がたくさんありました。一生苦言を聞く覚悟でいましたが(笑)、「移転して2~3週間は絶対使いづらいって思ったけど、慣れるものね。今はとっても快適、快適!」と言われたときは、本当にほっとしました。

移転チームの工事担当の若手からは「今日、偶然、営業部の人と隣の席になり、雑談して親しくなれました。このオフィス、やっぱりいいですね」という報告がありました。彼は、私の無理なお願いと施工会社の板挟みになって苦労した方だったのですが、だからこそ、このひとことは心底嬉しかったです。

オフィスを使う人の価値観はさまざま。しかも、当社はオフィス事業、ホテル事業、投資事業を展開しており、それぞれ立ち位置も方向性も違う。今もこれが正解だったのか、わかりませんが、どんな変化にも素早く対応できるような可変性の高い空間さえしっかりつくっておけば、たとえ失敗しても修正していけるし、みんなの意見を取り入れながら進化させることもできます。Agileは、これからのオフィスの重要なキーワードだと思います。

一ここを起点に、オフィス関係の受託事業を加速させる。

今回の経験はFM部の受託工事の営業活動にもつながります。FM部の中心業務は、お客様のオフィスのレイアウト工事など、設計や施工管理です。これまでも、さまざまな企業のオフィスづくりをお手伝いしてきましたが、私自身が理想のオフィスを経験していなかったので、どこか言葉が「借り物」になっていたような気がします。でも、今は新本社オフィスにご案内し、実際の経験に基づいた提案や助言、突っ込んだ議論ができます。

以前、社長から「私を説得するためではなく、企業の経営層に響くようなプレゼンを考えなさい」と言われました。すでにこの時から長期伴走型のオフィスデザイン・コンサルティング事業「WORK SELECT」による外部の事業受託の拡大を視野に入れていたのだと思います。

オフィス移転/リニューアルフローにおける「WORK SELECT」の特徴

「WORK SELECT」は、事前調査から設計・施工、移転・改修後のフォローアップまで全期間に渡り、お客様が求めるオフィスづくりをご提案・ご支援する事業です。自分自身が経験してきたので、担当者に寄り添うことができるんじゃないかと思っています。悩める担当者の方には、私自身が救われた「Agileな空間づくり」をお伝えしようと思っています。


Profile
永山由里香(ながやま・ゆりか)
鹿児島県種子島で生まれ、神奈川県、鹿児島県で育つ。大学で建築を学ぶ。卒業後、店舗設計事務所、2年間の海外留学、設計事務所を経て、2020年11月森トラストに入社。ファシリティマネジメント部に所属、本社移転チームに加わる。趣味は植物を育てること。アートの面白さにも目覚める。特技は考えを図や絵で表すこと。