神谷町の企業や住民とつながりながら、 街の魅力を広く伝え、
共に楽しみながら、 神谷町の存在感や価値を高めていきたい
「ディベロッパーの仕事は不動産開発だけなく、開発後もいろいろな活動を通じて、その街の発展を支えていくことだと思っています」。熱く語るのは、広報・マーケティング部Co-Creationチームに配属されて4年目の中村拓都。大学時代に演劇サークルで培った企画力、実行力ととびきりの笑顔で、自らもとことん楽しみながら神谷町の企業や地元の人々をつなぐ共創活動に没頭している。
― 汗ばむほど晴れた5月の土曜日、揃いのTシャツの集団がゴミをホイホイ拾い上げながら、軽やかに神谷町の街を駆け抜けた。このユニークなイベント『神谷町めぐまちプロギング』には、神谷町で働くワーカーや地元の人々など52人が参加。ほとんどの参加者がプロギング初体験、初顔合わせだったが、走り終える頃にはすっかり打ち解け、拾い集めた8キロ超のゴミを前に達成感と爽快感を分かち合った。これは森トラストが「Co-Creation(共創)」と名付けたエリアマネジメント活動の一環として行われたもの。企画した中村拓都にこのイベントの様子や狙い、Co-Creation活動への想いを聞いた。
「プロギング」は、スウェーデンで生まれた新しいフィットネスです。ジョギングしながらゴミを拾うのですが、体力や体調によってチーム分けするので誰でも参加できます。それぞれが拾ったゴミを、チームの中の数人が持っているゴミ袋に入れるたび、「ナイス!」と声を掛け合います。
実際の『神谷町めぐまちプロギング』の様子
ジョギングのフィットネス効果と、街を綺麗にする爽快感、声を掛け合うことで生まれる一体感が魅力です。しかも、神谷町という街をリアルに知ってもらえる。今回は、神谷町の氏神様である西久保八幡神社さんを休憩スポットにさせていただいて、クイズも交えて西久保八幡神社さんの歴史や神谷町の魅力などをご紹介しました。
皆さん、すごくテンションが高くて、クイズにも「おー」とか「へぇー」とか、ノリがいいので、こちらもテンションが上がりました。クイズは3問。どれも結構マイナーな問題にしたんですが、最年少の小さな男の子がなんと全問正解。彼は終始ノリノリで、お母さんと一緒に約3.5キロを見事完走しました。
神谷町エリアに関するクイズを出題
神谷町の歴史や魅力を紹介するにあたって、地元で生まれ育った飯倉町の町会長の小林さんにお話をうかがったのですが、昔は神社の境内で蚊取り線香を焚きながら、隅田川の花火を見物したとか。この方は西久保八幡神社さんの総代もされていて、神谷町の街に精通しています。プロギングにも参加され、皆さんと一緒に走りながら、神谷町の魅力や見どころを紹介してくださいました。
プロギングでいい汗を流し、超高層タワーと西久保八幡神社という新旧融合の景色に感動し、クイズで盛り上がり…。最後に拾ったゴミを計量したら、なんと8キロ超え! 皆で達成感に浸りました。参加された皆さんがすっかり打ち解けて談笑したり、名刺交換している様子を見て、オープンイノベーション的な効果もあることに気づきました。
― 参加者からは「神谷町の歴史を知ることができてよかった」、「この街を大切にして、街の魅力を広めようとしている森トラストの姿勢がすごくいいと思う」「また開催してほしい」といった感想が寄せられた。協賛した企業も高く評価してくれたという。
このイベントには5社・団体に協賛していただきました。協賛企業の方から「私たちも地域に貢献したいと思っていたが、こうしたイベントを通じて同じ想いを持つ企業や人々と連携できてとても良かった。今後も開催してほしい」と言っていただいたときは本当に嬉しかったです。これこそ、私たちのCo-Creation(共創)活動の目指すところであり、真髄ですから。
麻布台商店街会長の伊澤さん(左)と飯倉町会 町会長の小林さん(中央)に話を伺う様子
― 森トラストのCo-Creation活動は多岐にわたる。それらについては後ほど紹介することにして、まずは「プロギング」を見つけ出し、一般社団法人プロギングジャパンと連携して『神谷町めぐまちプロキング』を企画・実行した中村拓都に焦点を当ててみたい。彼はどんな学生時代を送ってきたのだろうか。
中学時代は、当時でも珍しい坊主頭の卓球部で徹底的に基礎を叩き込まれました。厳しい先生で、チャラチャラしたプレーをしたらめちゃめちゃ怒られる。高校時代は反動で(?)緩い感じの卓球部に。自分で考えるようになったら伸びました。中学時代の基礎があったからだと思います。
― 中学高校で卓球部の主将として部をまとめてきた中村だが、大学では一転して演劇にのめり込み、舞台美術制作から脚本、さらに役者までこなした。
演劇といってもシェークスピアとかじゃなく、コント系の演劇サークル。ここでウケをとる快感に目覚めました(笑)。T.M.Revolutionの西川貴教さんに似ていると言われ、『HOT LIMIT』の曲に合わせて、黒いガムテープを身体中に巻いてパフォーマンス。頭の中で「一体、何やってるんだろう?」という声が響きましたが、これが大ウケ(笑)。吹っ切れましたね。
― 「人前で話すことは苦にならなくなったし、人に喜んでもらえると自分も嬉しくなる」と話す。演劇サークルで企画から脚本まで手掛けたことも、今の仕事に大いに役立っているという。
舞台とイベントって共通点が多いんですよ。どちらも最終形として「どんなものをつくりたいか」をイメージし、それを実現するにはどんな準備が必要か、どんな人とどう協働すればいいかを詰めてつくり上げていく。
スケジュール感も似ています。どちらも半年前くらいから企画して走り出します。出だしはゆるゆる、最後はいつも必死(笑)。本番直前はハラハラドキドキです。「やるんじゃなかった」と思う瞬間もありますが、舞台やイベントにたくさんの人が来てくださって喜んでいる顔を見た瞬間、全ての苦労は消え去って「チョー気持ちいい」(笑)。
一番ドキドキするのは、天候に大きく左右される屋外イベントですね。コロナ明けに開催した飲食イベントは寒い上に強風。お客様が少なくて、出店してくださった方や関係者の方々に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。教訓を生かして、翌年秋の飲食イベントにはイルミネーション付きテントを設置するなど、いろいろ工夫し、天候にも恵まれて来場者数も売上げも伸ばすことができました。現在も記録更新中です。
― 森トラストに入社して6年目。今では神谷町のCo-Creation活動の「顔」となったが、出だしは決して順風満帆ではなかった。
ずっと「企画がしたい」、「人と接する仕事をしたい」と思っていたので、入社2年目に広報・マーケティング部Co-Creationチームに配属されたときはとても嬉しかったです。ところが配属後1ヵ月くらいでコロナ禍に。検討していたイベントが次々に中止になり、「自分は何にも貢献できていない」という思いが募り、不完全燃焼でした。
そこでオンラインで街の情報を発信したり、神谷町のレストランの食レポ動画を配信したり…。食レポなんてもちろん初体験ですから、何が何だかわからないまま、ぶっつけ本番でやっていた。冷や汗ものです。でも、神谷町エリアの企業や商店街、町内会などの集まりで、「あ、食レポしていた人だよね」と声をかけていただいたり、「面白そうなヤツ」と親近感を持っていただいたりして、今では「やってよかったな」と思います。僕の役割は街の中に飛び込んで企業や街の人々をつなぎ、一緒に神谷町エリアを盛り上げていくことですから。
― 上司は「中村君はこの仕事にドンピシャ」と太鼓判を押す。「彼はいつも自然体で街に飛び込んでいく。それが相手にも伝わる。Co-Creation活動は同じ志を持っていないとうまくいきません。自然にそういう一員になれるのが彼のいいところ。まさに、愛されキャラ。適任です」
この仕事は、損得勘定抜きにいろいろな外部の方とお付き合いできる。企業や組織の枠を超えて、一緒にいろいろなことを企画して実行できる。そして、参加した方々の笑顔を生で見ることができる。それがただひたすら楽しいです。
― Co-Creation活動のベースは、2018年に森トラストが策定した『神谷町God Valley ビジョン』。SDGs、オープンイノベーション、スマートテクノロジー、ウェルネスを核に、神谷町を「未来を創る街」にしていこうというものだ。森トラストは神谷町エリアの企業・団体に呼びかけ、同年、「神谷町God Valley協議会」を設立。現在29の企業・団体が加盟し、交流を深めている。
この協議会には、様々なジャンルの企業さんの他に、神谷町を象徴する東京タワーさんや愛宕神社さんも入っていただいています。まさに「ザ・神谷町」という顔ぶれです。
今回で4回目を迎える『TOKYO God Valley WEEK』は当社主催、協議会共催のエリアイベントです。冒頭の『神谷町めぐまちプロキング』もこのイベントのコンテンツの一つで、協議会の皆さんにもお声がけし、さまざまな形で協力していただきました。
『TOKYO God Valley WEEK 』のコンテンツも年々進化し、来場するお客様もご協力いただく企業さんの数も増えています。今春は、冒頭の「プロギング」のほか、健康にいい乳酸菌の商品をプレゼントする「ウェルネス菌活ガチャ」や、国際色豊かな料理とドイツビールを楽しめる恒例の人気イベント『神谷町オクトーバーフェスト』を開催しました。
連日大盛況だった『神谷町オクトーバーフェスト』
今回の『神谷町オクトーバーフェスト』は、ストリートピアノを設置して、12時から21時半まで自由に演奏できるようにしました。ストリートピアノの演奏をアップされているYouTuberもいらっしゃって順番待ちができることも…。18時からは人気アーティストによるピアノコンサートを開催。ファンの方も詰めかけ、SNSでもその様子が広く拡散されました。
昼休みや終業後にワーカーも弾きに来ていた本イベントのストリートピアノ
来場者数はこれまでで最高。それだけでなく、新しいコンテンツを発掘して加えたり、これまでご縁がなかった企業・団体の方々と連携して結果を出せたことは次につながるし、すごくよかったなと思っています。
― 中村にはまだまだやりたいことがある。
もっといろいろな企業と連携してこの街から新しい風を起こしたい。こちらからもお声がけしていますが、昨年くらいからお声をかけてくださる企業が増えてきたという実感があります。
神谷町はオフィスワーカーさんが多い街なので、出社することが楽しくなるようなコンテンツを打ち出せたらと思っています。特に神谷町のワーカーさんは健康意識が高く、朝活ヨガのイベントは大人気でした。
できれば、毎日のように健康的なイベントやコンテンツをやりたい。ただ、そうなると自社だけではできません。ウェルネス系の企業さんやスタートアップの方々と連携して、この街で実証実験をしてもらうという方法もありそうです。そのためのPRや仕掛けを考えていきたいですね。
― 「僕たちの活動でどこまで街を変えられるか、トライします!」、27歳の瞳が子どものように輝いた。
–Profile–
中村拓都(なかむら・たくと)
愛知県名古屋市出身。中学高校時代は卓球部、大学時代は演劇サークルで舞台美術、役者、脚本を担当。2019年森トラストに入社し、広報・マーケティング部に。同部では神谷町のCo-Creation活動に全力投球。趣味はプロ野球観戦、麻雀、アニメ、カラオケ、演劇の他、街歩き&人間観察が加わった。人の笑顔を見ること、人を笑顔にすることが大好き。